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WEPs
グッドプラクティス紹介

原則6
株式会社朝日新聞社
施策の担当部署
  • 1) 女性プロジェクト
  • 2) 編集局
施策概要
6.2 知見の共有
  • 1) 「朝日新聞社ジェンダー平等宣言」の公表。取材対象や主要な主催シンポジウム登壇者のジェンダー平等、女性登用と男性育休取得率の向上を目指し、人物紹介記事「ひと」欄、「朝日地球会議」、女性管理職比率に数値目標を設定した。国内メディアでは初。部門横断組織の女性プロジェクトが取組みの推進と達成度の検証、対外発信を行う。女性プロジェクトは2016年に発足。「ジェンダーを超えて、だれもが自分らしく生きられる未来を創る」をミッションに、多様な女性の生き方に寄り添い応援する発信を行っている。
  • 2) 3月8日の国際女性デーを中心に展開するキャンペーン報道「Dear Girls」。編集局の各部が連携し、ジェンダーギャップ、アンコンシャスバイアス、性暴力などのテーマで特報や連載、インタビューなどを多面展開している。記事は学校で教材として活用されている。ジェンダー平等宣言は「Dear Girls」を担当してきた記者からの発案がもとになっている。
施策を導入した経緯(理由・動機)
  • 1) 2019年の男女格差指数ランキングで日本が過去最悪の153カ国中121位となったことを受け、責任あるメディアとして、自ら内外に数値目標を公表し、ジェンダー格差解消に取組むことにした。現場の記者からの提案を受け、女性プロジェクトを軸に宣言をとりまとめ、社長名で公表した。
  • 2) 発端は、2014~16年に展開した長期企画「女が生きる 男が生きる」。ジェンダー不平等、アンコンシャスバイアスについて、硬軟とりまぜた記事企画で展開した。しかし、16年に発表された世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本は144カ国中111位と先進国最低水準。危機感をいだいた取材チームは全社的に取組む必要性を痛感。
    「次代を担う女の子たちのために、社会に根深く染みつく呪縛を解きたい」と、3月8日の国際女性デーを一つのヤマにした取組みに広げるよう局幹部に働きかけ、編集局全体の取組みとした。
施策の開始日
  • 1) 2020年4月1日
  • 2) 2017年3月
施策の主な目標
  • 1) 自社のコンテンツと組織の多様性確保、顧客・パートナーの共感獲得、働き方の見直しによる人材育成
  • 2) 社会全体の意識向上
    重要な意思決定の場にいるのは中高年の男性ばかりという日本では見慣れた光景も国際社会でみると特異であることを広く認識してもらう。次世代への応援を通じた読者からの共感と信頼の回復、購読者の増加。
施策を進めるにあたっての課題
  • 1) 宣言の趣旨は早期に経営トップに共有されたが、「数値目標」のとりまとめには社内各部門との調整が不可欠だった。部長会やデスク会では編集、企画、人事が制約されることによるコンテンツの質の低下や組織の混乱、目標未達を批判されるリスクを懸念する声が相次いだ。宣言の実効性の担保も課題だった。
  • 2) 編集局内で横断的に企画し、3月8日に向け一体的に取組むこと。
    ジェンダー専門記者がいない状況で、継続的に企画を進めること。
    意識の格差が編集局内にもあるなかで、広く紙面展開するための意識形成。
課題に対して工夫したこと
  • 1) 社員の半数を占める編集局の理解を得ることに力を注いだ。男性が大半の部長会で、男性優位の現状に対する疑問の声が出たことで流れが変わり、全社で取組む下地が整った。全社主要部門の管理職による「女性プロジェクト補佐会」も新設し、達成度の検証と目標立案にあたるほか、全社員にメール等で進捗を報告している。担当者の意識も変わり、「ひと」欄の女性比率は前年の28.4%から4割に。「朝日地球会議」登壇者の女性比率は35.8%から41%に上昇。研修で宣言を取り上げることで管理職の意識も高まり、社員も効果を実感できるようになってきた。
  • 2) 意識を共有した記者たちによる連携・情報交換と継続的な企画提案、それを実現する編集局幹部のリーダーシップが肝要だった。近年、社内のコミュニケーションツールが発達したこと、#MeToo運動やフラワーデモなど社会全体の性暴力・性差別への抗議活動が広がり、読者ニーズにあった企画だととらえられ始めたことも大きい。取組みの歴史は長く、2002年にはジェンダーの観点から好ましくない用語や見出しを取り上げたガイドブックを作成、17年には全面改訂版を作った。有志による記者勉強会も19年度からはteamsを用いて全国の総支局メンバーが参加可能になった。
組織のジェンダー平等の推進にあたり、
WEPs署名企業であることのメリットや効果
  • 1) 最新知見の学習と他社の女性活躍担当者との交流、自社の取組みの発信。
  • 2) 読者に対する信頼度のアップ、ブランド力向上など
施策の今後の計画・展望
  • 1) 社員への意識浸透のため社内表彰制度に「ジェンダー平等特別賞」を新設(1月表彰)。宣言発表から1年の21年4月には目標達成度を公表する。
    社外のパートナーとも連携してイベントを開催する。20年11月に昭和女子大学創立100周年記念シンポジウム「女性リーダーは世界を変える」を共催(30%Club Japan後援)。21年3月にはニューヨーク・タイムズ、お茶の水女子大学とともに「ジェンダーギャップ」をテーマにオンラインイベントを予定。
  • 2) 20年11月からは、名称を「Dear Girls」から「Think Gender」に改め、性別や世代を問わずジェンダーについて考えを深める記事企画を展開している。
    パパ記者たちが2019年に結成した自主的な取材集団「父親のモヤモヤチーム」に女性記者も加わって「男らしさ」を自ら問うヤフー連動企画、新聞・デジタル記事、イベント開催などを手がけている。国際男性デーの11月19日はオンラインイベントを開催、男女共同参画基本計画の第5次計画策定など政策の報道、企画化に取組むとともに、3月8日の国際女性デーまで継続的イベントとコンテンツ(記事・動画など)を有機的に組み合わせ、別にとらわれずに自分らしく生きられる社会づくりに向けて発信を強化したい。
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