2020年10月菅前首相のカーボンニュートラル(CN)宣言以降、多くの上場企業がCN宣言をしています。エネルギーを化石燃料の輸入に依存してきた日本にとって、再エネ価格は、世界に比べて高く、クリーンエネルギーの現在の導入率は18.1%と低い。CN社会の実現は、決して簡単な道のりではありません。
主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較
鉄鋼、セメント、化学などの多排出企業にとってはさらに高いハードルです。特に、これらの業界は、自家発電、熱の多消費をするため、hard to abateと呼ばれ、電力会社が再エネを増やしただけでは解決できません。しかし、日本の産業の根幹でもあるので、CN達成はマストになります。これは、世界が2050年のCNを目指し、EV(電動自動車)への移行など産業構造を変革してきているので、もしできなければ日本の経済は世界での競争力を失いかねないのです。
このように、CNが達成された2050年の社会を想定し、その未来で企業がどうあるべきか、その道のりを描き経営をすることをサステナビリティ経営といいます。
菅前首相が所信表明演説で、
温室効果ガスの排出企業を2050年までに実質ゼロにすると宣言
2050年カーボンニュートラルの
方針・戦略等を公表している企業
- 食 品
- アサヒ、味の素、江崎グリコ、霧島酒造(2030)、キリン、サッポロ、サントリー、日清製粉グループ本社、日本たばこ産業、明治HD、森永製菓、森永乳業ヤクルト本社、UCCホールディングス(2040)
- エネルギー資源
- INPEX、ENEOS(2040)、コスモエネルギーHD、石油資源開発
- 建設・資材
- AGC、エクシオグループ、大林組、鹿島建設、九電工、清水建設、住友大阪セメント、積水ハウス、大和ハウス工業、竹中工務店、東急建設、東洋製罐、西松建設(2030)、日本ガイシ、日本特殊陶業、ノーリツ、三井住友建設、LIXIL、リンナイ
- 素材・化学
- 旭化成、宇部興産、王子HD、花王(2040)、コーセー(2040)、資生堂(2026)、昭和電工、住友化学、積水化学工業、DIC、帝人、デンカ、東洋インキSCホールディングス、トクヤマ、日東電工、日本触媒、富士フイルム(2040)、三菱ガス化学、三菱ケミカルHD、ユニ・チャーム、ライオン、ワコール(2030)
- 医薬品
- エーザイ(2040)、小野薬品工業、武田薬品工業(2040)、田辺三菱製薬、中外製薬
- 自動車・輸送機
- アイシン、いすゞ自動車、川崎重工業、ケーヒン、デンソー(2035)、豊田合成、トヨタ自動車、豊田自動織機、トヨタ紡織、日産自動車、バンドー化学、ブリヂストン、本田技研工業、三菱ふそうトラック・バス(2039)、ヤマハ発動機
- 鉄鋼・非鉄
- エンビプロHD、神戸製鋼所、JFE HD、昭和電線HD、東京製鐵、DOWAグループ、日本製鉄、フジクラ、古河電気工業、三菱マテリアル(2045)、YKK
- 機械
- クボタ、栗田工業、ダイキン工業、DMG森精機(2022)、ナブテスコ、三菱重工業(2040)
- 電機・精密
- アズビル、イビデン、NEC、オムロン、オリンパス(2030)、カシオ計算機、キヤノン、コニカミノルタ(2030)、島津製作所、シャープ、新電元工業、セイコーエプソン、ソニーグループ(2040)、日本電気、パナソニック(2030)、日立製作所(2030)、富士通、富士通ゼネラル(2025)、富士電機、ブラザー工業、マクセル、三菱電機、安川電機、横河電機(2040)、リコー、ローム
- 情報通信・
サービスその他
- 伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、NTTデータ、NTTドコモ(2030)、オカムラ、関西エアポート、KDDI(2030)、JCOM、JTB、首都高速道路、セコム(2045)、Zホールディングス(2030)、ソフトバンク(2030)、大建工業、大日本印刷、中部国際空港、凸版印刷、日本電信電話(2040)、日本アジアグループ、日本郵政、日本ユニシス、野村総合研究所、パーソルホールディングス、ベネッセコーポレーション、楽天グループ(2023)、リクルート(2030)
- 電気・ガス
- 大阪ガス、沖縄電力、関西電力、九州電力、京葉ガス、西部ガス、JERA、四国電力、静岡ガス、中国電力、中部電力、中部電力パワーグリッド、電源開発、東京ガス、東邦ガス、東北電力、北陸電力、北海道電力
- 運輸・物流
- ANAグループ、S G ホールディングス、小田急電鉄、京急グループ、JR西日本、JR東日本、JR北海道、商船三井、東急、東京地下鉄、日本郵船、日本航空、ヤマトHD
- 商社・卸売
- 住友商事、双日、豊田通商、日立ハイテク(2030)、丸紅、三井物産、三菱商事
- 小 売
- アスクル(2030)、イオン、カインズ(2025)、J.フロントリテイリング、セブン&アイHD、ファミリーマート、ローソン
- 金融・不動産
- MS&ADインシュアランス グループ HD、群馬銀行(2030)、四国銀行、住友生命、第一生命HD(2040)、大和証券グループ(2030)、千葉銀行(2030)、東京建物、日本取引所グループ(2024)、日本生命、野村ホールディングス(2030)、ふくおかフィナンシャルグループ(2030)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(2030)、三井不動産、三菱地所、三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(2030)、明治安田生命保険、森ビル、りそなHD(2030)
出所:各社公表情報より作成
出典:Virtue Desingn. 資料をもとに作成
さらに、表の赤字に示すとおり、2050年よりも前倒しでCN宣言をしている企業もあります。日本が宣言している2030年の削減目標は、2013年度比-46%。50%削減の高みに向けて、挑戦を続けていくとしており、エネルギーミックスは資源エネルギー庁のエネルギー基本計画に基づいています(図参照)。
前倒しのCN宣言をしている企業は、電力会社から電力を供給してもらうデマンドサイドの企業が多いのですが、それでも2030年にCN宣言をしている企業もあるのです。このように、電力会社の電力だけに頼らず、自社でも再エネを導入することでCNを早く達成し、CNを実現した企業としてビジネス機会を得ようとしている企業もあります。
2050年カーボンニュートラルを目指す
日本の新たな「エネルギー基本計画」
大手IT企業のカーボンニュートラルとESG対応
例えば、アップルなどは、自社の運営は2019年に再エネ100%を達成し、サプライチェーン(部品などの供給会社)に対してもCNを期待しています。CNを2030年までに達成できる部品をメーカーはアップルと新たなビジネスができるかもしれません。これこそが、長期ビジョンに基づいた成長戦略です。このような長期経営戦略を持てる企業は、先見性と長期的成長性が期待できる企業だと言えるでしょう。
Apple社の取り組み事例
ESG投資家
自社における再エネ利用率100%を達成
2030年までにサプライチェーン全体での温暖化ガス排出量ネットゼロを目指す
2015年10月〜
Supplier Clean Energy Program
製造工程における炭素排出量を削減し、サプライチェーン全体での
クリーンエネルギー100%を目指すため、Apple社がサプライヤーを支援。
2022年4月時点でサプライヤー213社(※)が100%再エネへのコミットメントを表明。
2018年7月〜
Chine Clean Energy Program
Apple社と中国のサプライヤー10社で設立。
今後4年かけて3億ドル以上を共同投資する。
2019年〜
Power for Impact Program
地域コミュニティにとって大きなベネフィットと
なる再エネプロジェクトを展開。
Apple社
欧州で過去最大級となるグリーンボンドを発行
温室効果ガスの排出量を示すカーボンフットプリントの
抑制や
環境に配慮した
部材の使用、資源の節約に充当
ESG投資家
※コミットメントを表明している日本企業:
I-PEX、尼崎製罐、アルプスアルパイン、ENEOSホールディングス、恵和、シチズン電子、シャープ、ジャパンディスプレイ、スタンレー電気、住友電気工業、セイコーアドバンス、ソニーセミコンダクタソリューションズ、太陽ホールディングス、太陽誘電、ツジデン、TDK、デクセリアルズ、日東電工、日本メクトロン、日本航空電子工業、日本電産、日本電波工業、ヒロセ電機、フジクラ、ボーンズ、ミネベアミツミ、村田製作所、UACJ
出典:Virtue Desingn. 資料をもとに作成