本気でサステナブルカンパニー

未来企業を選ぶ
9つのポイント

専門家が特に重視する
9つの選択基準とは?

  1. 社長が、グローバルな長期的視点を持ち、サステナビリティメッセージを発信しているの?
  2. 社長が、 ジェンダー平等へのコミットメントを表明するメッセージを発信しているの?
  3. 男性と女性の賃金は、どのぐらい違うの?
  4. 女性が着実にキャリアアップできる環境は整っているの?
  5. 男性も家事・育児・介護などのケアワークが担えるような柔軟な働き方ができるの?
  1. 2050年までのカーボンニュートラル宣言を行い、長期的に持続可能な企業なの?
  2. 超長期視点で事業における気候変動のリスクと機会を分析して開示しているの?
  3. パリ協定が求める水準で2030年までのCO2削減目標(SBT)はあるの?
  4. 若者やNGOなど未来世代とのエンゲージメント(対話)を行っているの?

1
社長が、グローバルな長期的視点を持ち、
サステナビリティメッセージを発信しているの?

サステナビリティ分野の世界最大のイニシアテチブである国連グローバル・コンパクトに社長がコミットして署名しているかどうかに注目してみましょう

国連グローバル・コンパクトには、世界約160ヵ国、2022年現在、2000社を超えるグローバル企業・団体が署名しています。

【国連グローバル・コンパクト(UNGC)って?】

国連と民間(企業・団体)が手を結び、健全なグローバル社会を築くための世界最大のサステナビリティイニシアチブがグローバル・コンパクトです。各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための自発的な取り組みです。国連グローバル・コンパクトに署名する会員は、世界的に採択・合意された普遍的な価値として国際社会で認められている人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止に関わる10原則に賛同し、企業・団体のトップ自らのコミットメントのもと、その実現に向けて努力を継続することが求められています。

【国連グローバル・コンパクトが生まれた背景は?】

1990年代、急速にグローバル化が進む中、グローバル化の「負」の側面が顕著になり、もはや国家や国際機関だけではグローバルな課題を解決できなくなってきていました。コフィ・アナン国連事務総長(当時)は企業にグローバルな課題解決への参画を求め、世界の経営トップに「人間の顔をしたグローバリゼーション」への取り組みを促しました。

1999 年

コフィ・アナン国連事務総長(当時)が世界経済フォーラム(ダボス会議)で提唱

『世界共通の理念と市場の力を結びつける道を探りましょう。民間企業のもつ創造力を結集し、弱い立場にある人々の願いや未来世代の必要に応えていこうではありませんか。』

2000 年

ニューヨーク国連本部で正式に発足

出典:国連グローバル・コンパクトサイトより

2
社長が、ジェンダー平等へのコミットメントを
表明するメッセージを発信しているの?

まずは、国連「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」の署名企業かどうかをチェックしてみましょう。WEPsは、経営者自らが署名しなければならないので、ジェンダー平等へのコミットメントを示す一つの指標になります。

2022年6月8日時点で、世界中で6,600を超える企業が、日本では286社がWEPsに署名しています。署名しているかどうかをこちらで検索してみましょう。

署名=コミットメントの表明ですから、経営トップにはそのコミットメントを確実に実行する責任が生じます。経営者自らが自らの責任を理解し、なおかつ、ジェンダー平等の意義や経営上のメリットを理解していれば、WEPsを活用して網羅的な取り組みを行っているはずです。しかしながら、現状では、署名しっぱなしの企業が多いのも事実です。WEPsの原則1「企業トップによるリーダーシップ」と原則7「成果のモニタリングと報告」がセットであることを理解し、進捗状況のモニタリングや情報開示を積極的に行っているかどうかが見極めポイントです。

また、WEPsに署名しているかどうかにかかわらず、社長が企業HP、統合報告書、メディアのインタビュー、シンポジウムなどのイベントで、下記の内容もチェックしてみましょう。

  • ■「ジェンダー平等」という言葉を使って自社の考えや取り組みを語っているか
  • ■「女性活躍」「ダイバーシティ&インクルージョン」についての話では、これまでの性別役割分業意識を前提とする仕組み・企業文化を問題として捉え、それ自体を変革するという意思をメッセージとして発信しているか
  • ■ ジェンダー平等を推進することが企業価値の向上につながることを理解し、「女性活躍」という狭い視点ではなく、「経営・成長戦略」「人事戦略」「人権・ダイバーシティ戦略」と関連づけて語っているか

本質を理解している経営者は、自分の言葉で説得力のあるメッセージを発信できます。WEPsの公式サイトの経営者インタビューも参考にしてみましょう。

経営者自らが率先してロールモデルになっているかもチェックポイントです。

  • ■ 男性経営者が自ら育休を取得している
  • ■ 無意識バイアスの研修を受け、自分が学んだことを従業員と共有している
  • ■ ジェンダー平等推進に関するイベントに積極的に登壇する
  • ■ 30%クラブジャパン(女性役員比率30%を目指すイニシアティブ)に参加している

兵庫県豊岡市は、独自の認証制度「あんしんカンパニー」を導入しています。これまでに表彰された企業はいずれも中小企業ですが、経営者が明確な意思を持ち、実効性の高い取り組みを行っています。

3
男性と女性の賃金は、どのぐらい違うの?

2021年7月に女性活躍推進法が改正され、男女間賃金格差の情報開示が義務付けられました

301人以上の企業が、「正規雇用労働者」(いわゆる正社員)「非正規雇用労働者」「正規・非正規を含めた全労働者」の3つのカテゴリーで、男性の平均賃金に対する女性の平均賃金の割合を公表することになります。

【この指標はなぜ重要なの?】

法律は、性別による差別的な待遇を禁じています。ところが、企業の中には今も「間接的な差別」や「無意識のバイアスに基づく差別的な慣行」が残っており、それが「賃金格差」として現れます。性別にかかわりなく経験を積み、キャリアアップしていけるような環境が整備されているかを確かめる重要な指標です。

男女間賃金格差の国際比較
男性=100としたときの女性の水準

男女間賃金格差は、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ 指数の「経済」分野、WEPsの原則2「職場におけるジェンダー平等」の主要指標です。欧米諸国を中心に情報開示を法律などで義務化する国が増えています。企業や経済・社会に根強く残る性差別の実態を「見える化」し、実効性の高い取り組みにつなげていくために必要な情報だからです。

男女間賃金格差の推移
男性=100としたときの女性の水準

●一般労働者の所定内給与で見た場合、近年、男女間賃金格差は縮小している。2020年は、男性の平均が338,800円 (月額)、女性の平均が251,900円(月額)。

●勤続年数の男女間の差も同様に縮小している。2020年は、男性の平均が13.4年、女性の平均が9.3年。

【なぜ、格差が生まれるの?】

日本の企業の場合、「報酬の高い管理職・幹部職に占める男性の割合が高いこと」と「非正規雇用に占める女性の割合が高いこと」が大きな原因です。その背景には、社会全体に根強く残る性別役割分業意識があります。例えば、職場では、男性が経営に直結する基幹業務を担い、女性がサポート業務。家庭では、男性が稼ぎ手として家族を養い、女性が家事・育児・介護などのケアワーク。こうした分業意識が構造化された企業文化や働き方により、多くの女性がキャリアアップを断念したり、パート就労などの非正規雇用に切り替えていることが統計でも明らかです。また、長期の育児休業や時短勤務などの「女性の両立支援」が、逆に、役割分業意識を再強化したり、女性のキャリアアップの阻害要因になり得ることも指摘されています。

こうした固定観念は、家庭、学校教育、メディアなどで見聞きしたことや経験したことをベースに形成され、無意識のレベルで、私たちの日々の行動や意思決定にも影響すると言われています。それは、職務・業務アサインメントの割り振りや、評価、昇進・登用など、人事に関する重要な意思決定でも同じです。「がむしゃらに働き、皆を統率する男性」というリーダー像が無意識にインプットされていれば、女性にその職を任せるのは不安になり、男性候補者よりも厳しく実績を求めがちになります。人は、無意識に「自分に近い属性・経験を持つ人」に親近感を覚え、高く評価する傾向があることから、人事の意思決定者に男性が多ければ、男性が選ばれる傾向が高まります。こうした無意識のバイアスが間接的な差別を生み出し、賃金格差となって現れるのです。

/業界別のジェンダーバイアスの現状について/
男女共同参画推進連携会議の参加団体における男女共同参画の
現状把握と取組状況
(アンケート調査結果)

「無意識のバイアスに気づくための研修」と「無意識のバイアスが作用しないような仕組みづくり」が重要です。無意識のバイアスを完全に取り除くことはできません。バイアスの入り込まないような、客観的な採用・評価・昇進・登用などの仕組みが重要です。また、「女性の両立支援」にとどまらず、すべての従業員に対して柔軟な働き方を保障しているか、男性育休を推進しているかもチェックしましょう。
現状では格差が大きい企業でも、その実態を認識し、縮小に向けた明確なロードマップや戦略がある企業や、WEPsに署名し、包括的な取り組みを行っている企業は、差別のない、公正な待遇にコミットしている可能性が高いでしょう。

4
女性が着実にキャリアアップできる環境は
整っているの?

採用時の男女比率、管理職の男女比率、特に事業部を統括する執行役員の女性割合に注目してみましょう

政府が民間企業に対して「女性活躍推進」を強く促し始めたのが2013年、女性活躍推進法が制定されたのが2016年です。
国の統計を見ると、労働参加率、管理職、役員の女性割合は確実に上昇していますが、国際比較で見るとまだ低いことがわかります。

この5年間で、採用、管理職、役員の女性比率が大きく上昇した企業は、女性のキャリアアップを可能にするための施策を着実に実行してきた企業だと言えるでしょう。企業のホームページや厚生労働省の女性活躍推進データベース(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/)で過去のデータを探し、経年変化を見てみましょう。もしくは、人事担当者など、企業に直接質問してみましょう。企業の中には、女性比率のアップを「単なる数合わせ」として捉えているところもあります。数値だけはなく、他のポイント(社長のコミットメント、賃金格差の解消、柔軟な働き方)も併せて、包括的な取り組みを行っているかどうかを確認しましょう。

採用における男女比率はバランスが取れていても、管理職・役員比率に男女格差がある場合は、今後、管理職・役員のジェンダーバランスを拡充していくために、どのような数値目標・期限を設定し、どのような計画を実行しているかをチェックしてみましょう。

女性のキャリアアップを阻む組織的な要因として明らかになっているのは、

  • ■ 管理職・役員に女性のロールモデルが少ないこと
  • ■ 管理職・役員職を務めるために必要な職務経験や研修の機会が限定的であること
  • ■ 長時間労働や転勤が評価される場合は女性に不利に働くこと
  • ■ 昇進・登用に関する意思決定に関与しているのは圧倒的に男性が多いこと
  • ■ 意思決定がクローズドで属人的に行われていること
  • ■ セクシュアルハラスメントへの対応が甘いこと

といったことです。こうした問題を整理し、包括的な施策を取っている企業が、誰もがフェアに評価され、キャリアを積める職場だと考えられるでしょう。

WEPs原則4「女性のキャリアップを可能にする教育と研修」で推奨されている取り組みは、4つあります。

全般的な育成プログラム
  • ● 女性を対象とした管理職・役員育成プログラム
  • ● アンコンシャス・バイアス研修とジェンダー平等に関する啓発
  • ● セクシュアル・ハラスメント研修

5
男性も家事・育児・介護などのケアワークが
担えるような柔軟な働き方ができるの?

育休平均取得期間の情報開示をしているか、取得のしにくさ(上司・職場の理解、育休取得経験社/ロールモデルの不在、キャリアアップや収入減への不安等)を解消するような施策をとっているかをチェックしてみましょう

かつては、「家庭は妻に任せて、がむしゃらに働ける男性」がサラリーマンのあるべき姿とされていましたが、それは、男性の家庭での役割や家族との時間を否定する価値観であり、配偶者のキャリアを中断させる要因でもありました。家事は、人間が生きていくための生活スキルであり、育児は、子どもの成長を見守ることで生涯を通じた良い関係性を育むことにつながり、子どもを通じて地域社会とつながる機会でもあります。こうしたスキルや人間関係やネットワークを育む時間を持つことは、男性の権利でもあるのです。昭和の企業戦士が家庭や地域社会に戻ったとき、生活スキルや地域での人間関係に欠き、子どもとの関係も希薄で孤立しがちであることから、中高年男性の孤立対策は政策にもなっています。

国の調査によると、20代〜30代の男性の7割以上が「自分と配偶者で半分ずつ家事負担をしたい」と考えていますが、実際には、男性の労働時間は長く、家事・育児などのケアワークは女性に大きく偏っています。

家事に関する配偶者との役割分担の
希望(男性)
生活時間の国際比較(男女別)

男性の育休取得率はわかりやすい指標ですが、「取得期間」が1日〜数日では意味がありません。「家事・育児を共に担えるようにする」という目的にかなうような日数かどうかが重要です。平均取得期間の情報開示をしているか、取得のしにくさ(上司・職場の理解、育休取得経験社/ロールモデルの不在、キャリアアップや収入減への不安等)を解消するような施策をとっているかをチェックしてみましょう。

転勤に関する配慮の有無、テレワークやフレックスタイム、長時間労働の解消など、性別に関係なく、すべての従業員が柔軟な働き方ができるような施策があり、性別を問わず利用できるようになっているかも重要な情報です。

WEPs原則2「職場におけるジェンダー平等」の「柔軟な働き方」の項目で推奨されている取り組みの例は以下の通りです。

  • ・すべての従業員が休業制度を利用できる環境を整え、休業後に同等の報酬・職位に復帰するためのサポートを提供する
  • ・長時間労働の是正や転勤制度の見直し、柔軟な働き方の導入・運用に取り組み、すべての人が働きやすい環境を整備する
  • ・性別にかかわらず、すべての従業員が、子どもや扶養家族のケアを確保できるような、サポート、資源、情報を提供する

6
2050年までのカーボンニュートラル宣言を行い
長期的に持続可能な企業なの?

長期ビジョンに基づきサステナビリティ経営に取り組んでいることが、先見性と長期的成長性が期待できる企業と言えるでしょう

2020年10月菅前首相のカーボンニュートラル(CN)宣言以降、多くの上場企業がCN宣言をしています。エネルギーを化石燃料の輸入に依存してきた日本にとって、再エネ価格は、世界に比べて高く、クリーンエネルギーの現在の導入率は18.1%と低い。CN社会の実現は、決して簡単な道のりではありません。

主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較

鉄鋼、セメント、化学などの多排出企業にとってはさらに高いハードルです。特に、これらの業界は、自家発電、熱の多消費をするため、hard to abateと呼ばれ、電力会社が再エネを増やしただけでは解決できません。しかし、日本の産業の根幹でもあるので、CN達成はマストになります。これは、世界が2050年のCNを目指し、EV(電動自動車)への移行など産業構造を変革してきているので、もしできなければ日本の経済は世界での競争力を失いかねないのです。
このように、CNが達成された2050年の社会を想定し、その未来で企業がどうあるべきか、その道のりを描き経営をすることをサステナビリティ経営といいます。

菅前首相が所信表明演説で、
温室効果ガスの排出企業を2050年までに実質ゼロにすると宣言
2050年カーボンニュートラルの
方針・戦略等を公表している企業
食 品
アサヒ、味の素、江崎グリコ、霧島酒造(2030)、キリン、サッポロ、サントリー、日清製粉グループ本社、日本たばこ産業、明治HD、森永製菓、森永乳業ヤクルト本社、UCCホールディングス(2040)
エネルギー資源
INPEX、ENEOS(2040)、コスモエネルギーHD、石油資源開発
建設・資材
AGC、エクシオグループ、大林組、鹿島建設、九電工、清水建設、住友大阪セメント、積水ハウス、大和ハウス工業、竹中工務店、東急建設、東洋製罐、西松建設(2030)、日本ガイシ、日本特殊陶業、ノーリツ、三井住友建設、LIXIL、リンナイ
素材・化学
旭化成、宇部興産、王子HD、花王(2040)、コーセー(2040)、資生堂(2026)、昭和電工、住友化学、積水化学工業、DIC、帝人、デンカ、東洋インキSCホールディングス、トクヤマ、日東電工、日本触媒、富士フイルム(2040)、三菱ガス化学、三菱ケミカルHD、ユニ・チャーム、ライオン、ワコール(2030)
医薬品
エーザイ(2040)、小野薬品工業、武田薬品工業(2040)、田辺三菱製薬、中外製薬
自動車・輸送機
アイシン、いすゞ自動車、川崎重工業、ケーヒン、デンソー(2035)、豊田合成、トヨタ自動車、豊田自動織機、トヨタ紡織、日産自動車、バンドー化学、ブリヂストン、本田技研工業、三菱ふそうトラック・バス(2039)、ヤマハ発動機
鉄鋼・非鉄
エンビプロHD、神戸製鋼所、JFE HD、昭和電線HD、東京製鐵、DOWAグループ、日本製鉄、フジクラ、古河電気工業、三菱マテリアル(2045)、YKK
機械
クボタ、栗田工業、ダイキン工業、DMG森精機(2022)、ナブテスコ、三菱重工業(2040)
電機・精密
アズビル、イビデン、NEC、オムロン、オリンパス(2030)、カシオ計算機、キヤノン、コニカミノルタ(2030)、島津製作所、シャープ、新電元工業、セイコーエプソン、ソニーグループ(2040)、日本電気、パナソニック(2030)、日立製作所(2030)、富士通、富士通ゼネラル(2025)、富士電機、ブラザー工業、マクセル、三菱電機、安川電機、横河電機(2040)、リコー、ローム
情報通信・
サービスその他
伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、NTTデータ、NTTドコモ(2030)、オカムラ、関西エアポート、KDDI(2030)、JCOM、JTB、首都高速道路、セコム(2045)、Zホールディングス(2030)、ソフトバンク(2030)、大建工業、大日本印刷、中部国際空港、凸版印刷、日本電信電話(2040)、日本アジアグループ、日本郵政、日本ユニシス、野村総合研究所、パーソルホールディングス、ベネッセコーポレーション、楽天グループ(2023)、リクルート(2030)
電気・ガス
大阪ガス、沖縄電力、関西電力、九州電力、京葉ガス、西部ガス、JERA、四国電力、静岡ガス、中国電力、中部電力、中部電力パワーグリッド、電源開発、東京ガス、東邦ガス、東北電力、北陸電力、北海道電力
運輸・物流
ANAグループ、S G ホールディングス、小田急電鉄、京急グループ、JR西日本、JR東日本、JR北海道、商船三井、東急、東京地下鉄、日本郵船、日本航空、ヤマトHD
商社・卸売
住友商事、双日、豊田通商、日立ハイテク(2030)、丸紅、三井物産、三菱商事
小 売
アスクル(2030)、イオン、カインズ(2025)、J.フロントリテイリング、セブン&アイHD、ファミリーマート、ローソン
金融・不動産
MS&ADインシュアランス グループ HD、群馬銀行(2030)、四国銀行、住友生命、第一生命HD(2040)、大和証券グループ(2030)、千葉銀行(2030)、東京建物、日本取引所グループ(2024)、日本生命、野村ホールディングス(2030)、ふくおかフィナンシャルグループ(2030)、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(2030)、三井不動産、三菱地所、三菱 UFJ フィナンシャル・グループ(2030)、明治安田生命保険、森ビル、りそなHD(2030)
出所:各社公表情報より作成
出典:Virtue Desingn. 資料をもとに作成

さらに、表の赤字に示すとおり、2050年よりも前倒しでCN宣言をしている企業もあります。日本が宣言している2030年の削減目標は、2013年度比-46%。50%削減の高みに向けて、挑戦を続けていくとしており、エネルギーミックスは資源エネルギー庁のエネルギー基本計画に基づいています(図参照)。
前倒しのCN宣言をしている企業は、電力会社から電力を供給してもらうデマンドサイドの企業が多いのですが、それでも2030年にCN宣言をしている企業もあるのです。このように、電力会社の電力だけに頼らず、自社でも再エネを導入することでCNを早く達成し、CNを実現した企業としてビジネス機会を得ようとしている企業もあります。

大手IT企業のカーボンニュートラルとESG対応

例えば、アップルなどは、自社の運営は2019年に再エネ100%を達成し、サプライチェーン(部品などの供給会社)に対してもCNを期待しています。CNを2030年までに達成できる部品をメーカーはアップルと新たなビジネスができるかもしれません。これこそが、長期ビジョンに基づいた成長戦略です。このような長期経営戦略を持てる企業は、先見性と長期的成長性が期待できる企業だと言えるでしょう。

Apple社の取り組み事例
ESG投資家

自社における再エネ利用率100%を達成

2030年までにサプライチェーン全体での温暖化ガス排出量ネットゼロを目指す

2015年10月〜
Supplier Clean Energy Program

製造工程における炭素排出量を削減し、サプライチェーン全体での
クリーンエネルギー100%を目指すため、Apple社がサプライヤーを支援。
2022年4月時点でサプライヤー213社(※)が100%再エネへのコミットメントを表明。

2018年7月〜
Chine Clean Energy Program

Apple社と中国のサプライヤー10社で設立。
今後4年かけて3億ドル以上を共同投資する。

2019年〜
Power for Impact Program

地域コミュニティにとって大きなベネフィットと
なる再エネプロジェクトを展開。

Apple社
欧州で過去最大級となるグリーンボンドを発行
温室効果ガスの排出量を示すカーボンフットプリントの
抑制や
環境に配慮した
部材の使用、資源の節約に充当
ESG投資家

※コミットメントを表明している日本企業:
I-PEX、尼崎製罐、アルプスアルパイン、ENEOSホールディングス、恵和、シチズン電子、シャープ、ジャパンディスプレイ、スタンレー電気、住友電気工業、セイコーアドバンス、ソニーセミコンダクタソリューションズ、太陽ホールディングス、太陽誘電、ツジデン、TDK、デクセリアルズ、日東電工、日本メクトロン、日本航空電子工業、日本電産、日本電波工業、ヒロセ電機、フジクラ、ボーンズ、ミネベアミツミ、村田製作所、UACJ

出所: Appleウェブサイト https://www.apple.com/environment/ など
出典:Virtue Desingn. 資料をもとに作成

7
超長期視点で事業における気候変動の
リスクと機会を分析して開示しているの?

TCFDに賛同しているか、シナリオ分析をしているかを見てみましょう

【TCFDが生まれた背景は?】

2015年12月に採択されたパリ協定を受け、金融業界を中心に、気候変動が投融資先の事業活動に与える影響を評価する動きが世界的に広まっています。このような中で、G20財務大臣及び中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD; Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」は、2017年6月に最終報告書(以下「TCFD 提言」)を公表しました。日本では、経済産業省が「気候関連財務情報開示に関するガイダンス(TCFD ガイダンス)」を2018年12月に公表するなど、TCFD提言への対応に向けた機運が高まっています。

【TCFDとは】

TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業等に対し、気候変動関連リスク、及び機会に関する下記の項目について開示することを推奨しています。

  • ・ガバナンス(Governance):どのような体制で検討し、それを企業経営に反映しているか。
  • ・戦略(Strategy):短期・中期・長期にわたり、企業経営にどのように影響を与えるか。またそれについてどう考えたか。
  • ・リスクマネジメント(Risk Management):気候変動のリスクについて、どのように特定、評価し、またそれを低減しようとしているか。
  • ・指標と目標(Metrics and Targets):リスクと機会の評価について、どのような指標を用いて判断し、目標への進捗度を評価しているか。

金融庁の金融審議会の作業部会(2022年3月)でも、有価証券報告書にTCFD関連項目など気候変動を含む「サステナビリティ」と、「人的資本・多様性等」に関する情報開示の義務化が決まり、早くて2023年度から各企業の開示が求められる見通しです。サステナビリティの項目は、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB:International Sustainability Standards Board。以下、ISSB)の新基準を踏まえ、TCFDの4つの柱である「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標・目標」をベースとした開示が求められる見込みで、このうち、「ガバナンス」「リスク管理」については、有価証券報告書を作成する全ての企業に開示が要求され、「戦略」「指標・目標」については、重要性を踏まえた上で、各企業が開示是非の判断を下すことになる見込みです。

8
パリ協定が求める水準で2030年までのCO2削減目標
(SBT)はあるの?

SBT(パリ協定で定められた2℃もしくは1.5℃目標)にコミットして、2030年のロードマップを策定しているかをみてみましょう

【SBT(Science Based Targets)って?】

SBTは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準<Well Below 2℃>に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。

【SBTが重視される背景】

SBTi の CEO である Luiz Fernando do Amaral 博士は、次のように述べています。「今日の世界は多くの課題に直面しています。ロシアによる壊滅的なウクライナ戦争、進行中のパンデミック、ますます緊急を要する気候危機などです。この重要な時期に、私たちは自分自身を分断させることはできません。これらの実存的危機に直面して、SBTi は政府、企業、NGO と協力し続け、強力な協力、健全な議論、科学的研究を通じて、1.5°C の企業の気候変動対策をニューノーマルとして強化していきます。科学は明らかです。私たちはすでに気候変動の影響を経験しており、現在の軌道を続けることは大惨事に等しい。」
このレポートは、SBTi が社会にもたらす価値が今まで以上に必要とされていることを示しています。私たちは、科学に基づく目標の指数関数的な成長を推進し続け、世界中の企業や金融機関にとって「通常どおり」の目標にする必要があります。

9
若者やNGOなど未来世代とのエンゲージメント
(対話)を行っているの?

SDGsの策定過程では、未来を担う若者やさまざまな社会課題、地球環境問題の解決に向けて活動するNGOの声を重視しました。多様なステークホルダーとの対話を通じて次世代の提案を受け入れたり、価値観の違いを認め合える企業風土なのかも重要な判断基準です。

若者やNGOの意見に誠実に耳を傾ける姿勢がある企業は、大きな事業環境変化でも対応できる柔軟性があり、イノベーションを起こす可能性も大きく、きっと将来的に社会にとって重要な存在であり続けることでしょう。

先進的な企業の中には、Z世代の若者やNGO 出身者をCSO(=Chief Sustainability Officer)やCFO(=Chief Future Officer: 最高未来責任者)に抜擢したり、サステナビリティのアドバイザリーボードに登用したりするケースもあります。

CSOは最高サステナビリティ責任者のことで、組織における重要な役職の1つです。このポジションがある企業は、サステナビリティを自社の事業戦略に統合しようとしている企業と言えるでしょう。例えば、SDGsの課題を解決するエシカルな商品やサービスの提供を促進したり、再生可能エネルギーの導入を推進したり、次世代の育成などを担ったりする役割です。CSOとしてZ世代の若者やNGO出身の方が就任している企業は、本気で中長期的にサステナビリティ経営を行っている企業です。

海外では、スウェーデンのイケア(IKEA)が、CSO(最高サステナビリティ責任者)に、カーボンニュートラルを推進する国際NGO「クラスメイト・グループ」の創始者であるスティーブ・ハワード氏を抜擢しています。再生可能エネルギー100%のゴールに向けて、太陽光パネルを販売し、余った電力を買い取るサービスや、寿命が長くて省エネルギーなLEDへの切り替え、植物由来のベジボールの販売など、サステナビリティ戦略を多角的に進めています。

また、「ESG経営」を積極的に推進している企業の中には、サステナビリティ専門のアドバイザリーボードを設置する企業も増えてきています。ボードメンバーに、Z世代の若者やNGO出身の方を登用し、経営そのものをさらにオープンにしていくという潮流もあります。
まずは、経営トップである社長が、社内の若手社員とサステナビリティをテーマに対話の機会を持っているかどうかも重要なポイントです。他にも、積極的にSDGsゴールの実現を行うためのアワードなどを社内で実施しているか、若手社員のアイデアを事業に取り入れる仕組みがあるかどうか、外部のSDGsアワードなどへの参加を行っているかどうかなどについても見てみましょう。